実は気候変動に対して脆弱な「F1種」
F1種の両親のそれぞれは、実は単純な遺伝子しか持っていません。F1種は、特徴が発現しやすいように単純化された遺伝情報しかないために、一代目の野菜が形や大きさなどが均一に生育するのです。

また「F1は病気に強い」とよく言われますが、本当にそうでしょうか。
F1種は、農薬や害虫などには強く耐性を持たせてはいますが、ある病気が産地に蔓延すると、脆弱さが露呈します。F1種は、遺伝情報が単純なせいで、耐病性を持っていない病気にあうと、固定種より脆いのです。

それに対して固定種は、自家採種が繰り返されたことにより、地域で変異を重ねた多様な病害菌にも、抵抗性を獲得しているのです。代々その土地で生きていくために必要な遺伝情報を保有し、自家採種を続けていくうちに、さらに気候や風土に適応していきます。
さらに固定種は、日本に伝来する以前に世界中を旅してきていますから、世界中のさまざまな病気の洗礼を受けており、その過程でさまざまな病気に対する免疫を獲得しているのです。
F1種のほとんどの生産は海外企業
今や販売されている野菜のほとんどが、F1種となり、毎年、購入しなければならない商品となっているわけですが、とくに日本は種子の自給率が低く、種子のほとんどの生産を海外に頼る状況に至っています。

何故、そんな風にがらりと種子のあり方が変わったのでしょうか?
それはまずアメリカの巨大種苗会社の登場により、農薬・化学肥料を必要とするF1種の世界的なシェア拡大が始まったからです。それに続いてドイツや中国、そしてインドと種苗会社が次々と現れました。それはまさに、近年に始まった「利益追求の人為的な農業」時代の幕開けでした。
とくに日本は、野菜については、自国の固定種を守る対策をとらなかったので、ほんのわずかな期間に、F1種の野菜が市場を占めるようになってしましました。
野菜だけではなく、お米も海外産に?!

いっぽう米、小麦、大豆などの主要穀物については、各都道府県が日本の固定種を守って確保していくという「種子法」(1952年成立)によって守られていましたが、2018年に廃止。その結果、今後は野菜だけではなく、米や麦、大豆も日本の固定種は消え、海外から入ってくるF1種や遺伝子組み換え種子にとって代わられることが危惧されています。すでに外食産業においては、価格の安いアメリカ産のカルローズ米が圧巻しています。
日本市場で遺伝子組み換え農産物が拡大

さらに海外の巨大種苗会社は、遺伝子組み換え技術の開発を進め除草剤と、除草剤をかけても枯れないように作られたGMO種子をセットで、世界に向けて販売し始めました。その代表的な商品が、モンサント社(米)(現:バイエル社(独))やシンジェンタ社(スイス)((現:中国))が特許権を持つGMO種子と、最強の除草剤と言われていた「ラウンドアップ」です。
「ラウンドアップ」は、世界でもっとも売れた除草剤と言われていますが、これはかつてベトナム戦争で大量に散布され、その結果、今も障害を持つ子供が生まれるという問題が浮上してきている除草剤です。

残念ながら日本はオーガニックに関心が薄いこともあって、遺伝子組み換え農産物が普及しやすい市場となってしまいました。さらに新しい法律を制定することで、つまり種を採ることを禁止する「種苗法」によって、本来の農業とはかけ離れた海外からの「不自然な」農産物が、ますます横行するようになっています。

バイエル:ドイツ 医薬品(アスピリン、ヘロインなどで有名)、農薬の製造。主にF1種や遺伝子組み換え種子の製造。モンサント社(米)を2018年に買収、吸収。種苗販売の世界シェア1位。
コルテバ:米国 ダウ・ケミカル社(米)と、デュポン社(米)の統合から農業部門の独立組織として誕生。主に農薬や種子の開発、製造。世界的なトウモロコシや大豆の種子の販売で有名。世界シェア2位。
シンジェンタ:中国 スイスに本拠地を置く多国籍企業。ノバルティス社とゼネカ社(現:アストラゼネカ)の農業事業が統合して誕生。農薬世界最大手。主に除草剤、殺菌剤、殺虫剤の開発と販売。
ユーピーエル:インド 世界的な農薬、F1種子・種苗の製造と販売。ポストハーベスト農薬で有名。
サカタのタネ:日本 花と野菜の品種開発大手。F1種子を世界中から輸入し品種開発をして、世界170ヶ国以上に販売。国内シェア1位。
カネコ種苗:日本 F1種子を世界中から輸入して品種開発。高いゲノム編集技術でワクチン接種苗で有名。農薬、肥料の開発もしている。国内シェア2位。
タキイ種苗:日本 創業190年の老舗メーカー。観賞用ひまわりと「葉牡丹」が世界で有名。F1種子を世界中から輸入し品種開発をして販売。国内では「桃太郎」トマトで有名。国内シェア3位。